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ラフ・シモンズ、DNAをハイパーミックスの新生「CK」お披露目

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ラフ・シモンズ(Raf Simons)が2月10日、新生「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」のランウエイショーを開催した。会場はニューヨーク・ミッドタウンにある、カルバン・クライン本社。自身のブランド「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」で2014-15年秋冬シーズンにコラボレーションし、今回の「カルバン・クライン」の刷新に際してもイメージビジュアルへの協力を依頼したアメリカのアーティスト、スターリング・ルビー(Sterling Ruby)のアート作品を天井から飾り、来場者を出迎えた。ショーは、女優ソフィア・アン・カルーソ(Sophia Anne Caruso)が歌う「This Is Not America」でスタート。アメリカ人ではない自身、正直、アメリカの大衆的だったり消費的だったり、享楽的だったりするカルチャーとは対極にさえ位置している自分自身の暗示なのか?それとも、多くのファッション・デザイナー同様、ドナルド・トランプ(Donald Trump)への反旗の意を表したのか?意味深な音楽とともに、ショーは幕を開けた。

コレクションは、ラフ・シモンズであり、「カルバン・クライン」だった。「ジル・サンダー(JIL SANDER)」や「ディオール(DIOR)」同様に、彼はメゾンに新たな風を吹き込みつつも、DNAを根本から破壊するようなことはしない。そんな思いを感じさせた。

ファーストルックは、ちょっぴり肉厚なウールモヘアをシャープにカットしてスポーツウエアのカラーに染め、ウエスタン風のディテールを加えたシャツとサイドテープのパンツ。「カルバン・クライン」のミニマル、アメリカン、そしてスポーティーというメゾンコードから誕生したスタイルだろう。これに続くキールックは、最後に外側をPVCで覆ったコートやドレス群。ガンクラブチェックのチェスターコートを筆頭に、伸縮性のあるチュールに無数のフェザーを加えたドレス、そしてフェイクファーのコートさえPVCで覆い、「カルバン・クライン」らしいフューチャリスティックな要素を強調する。フェザーのドレスは時にセクシーや官能的という言葉を超越するほど挑戦的で、女性の胸や下着が透けて見えるほど。1980年代、セックスを売りに賛否両論を巻き起こし、デザイナーズブランドによるアンダーウエアという新しいビジネスを開拓した「カルバン・クライン」の歴史を思い出すのは、言うまでもない。

その後も、ウエスタン、アメリカンレトロ、デニム、ピュアホワイトなど、「カルバン・クライン」らしいキーワードで表現されるスタイルが続く。ただそれらを混沌とミックスしたのが、ラフらしい。さらにはネイティブアメリカンなモチーフをパッチワークで表現したライナーを張り付けたモッズコートなど、スターリング・ルビーとの協業を思わせるアイテムを加え、アート感覚にあふれるハイパーミックスを加速させる。ミニマルであるがゆえに、時に一本調子になりがちだった「カルバン・クライン」の進化が始まった。

ファースト・コレクションは、これまで外の人間だったラフ・シモンズが、これまでの「カルバン・クライン」、今のアメリカ、そして、今の消費者を見据え、メゾンコードをたぶんに意識しながら、足りないところをアメリカンアーティストのスターリング・ルビーの力を借りて表現した、そんな印象のコレクションだ。これから、ますます中の人間になることで、「カルバン・クライン」は、そしてラフ・シモンズ自身はどう進化するのか?チーフ・クリエイティブ・オフィサーとしてラグジュアリーからマスまで、あらゆる「カルバン・クライン」の商品におけるクリエイティブを任された彼自身の変化にも注目したい。